前にマイクのスペックの見方で規定入力レベルと
出力インピーダンスについて書いたので、今回は
ヘッドホンのスペックの見方について書いてみます。
ヘッドホンで音楽を聞くとき、DTMで作った音をモニタリングする時は、
CDより高いサンプリング周波数で標本化、量子化された音を聞く事が
多いと思いますが、一般的にはCDのソースか圧縮されたソースを
聞く事が多いと思います。
CDを例にとると、CDは44.1kHz/16bitのデジタル信号なので
正確にはナイキスト周波数によって22.05kHzとなるのですが、
ハイパスフィルターやローパスフィルターの特性を考慮し、
CD-DAの規格として20Hz~20kHzとされています。
多くのヘッドホンは、20Hz~20kHzを超える周波数特性を有しています。
スピーカーのコーンと比較し、ヘッドホンのダイヤフラムは非常に薄く
繊細に出来ており、微細な信号や振動の変化に追従できるので、
比較的安価なヘッドホンでも周波数特性が広くなっています。
しかし、この周波数特性と音の良さは関係ありません。
下の周波数から上の周波数までがどのような線であるかによって、
ロック向きとかクラシック向き、フラットでモニタリング向きとなります。
周波数特性についてはこれくらいにして他のスペックについて書いてみます。
まずは出力音圧レベルとして表示される「dB(デシベルと読みます)」ですが、
これは1mWの電力の時に1kHzの音にどれだけの音圧が出せるかを
示したものです。1mW入力時の1kHzの感度ですね。
この感度が高いと信号(電力)の強弱による音圧差が大きいと
いうことができ、ダイナミックレンジが広いともいえます。
ただし、カタログスペックに書いてあるのは1kHzなので、
全周波数帯域において感度が良いとは別の話です。
次にΩ(オーム)ですが、32オームとか40オームと書かれています。
このオームはヘッドホンのボイスコイルの抵抗値で、
インピーダンス値と呼ばれます。
このインピーダンスは電圧が加わっている間、
その電圧の強弱により僅かですが変動しています。
電圧と抵抗の関係は、抵抗が低い方が電力が多くなります。
すなわち同じ機器で同じボリューム位置で同じ曲を再生した場合、
インピーダンスの小さいヘッドホンは音が大きく、
インピーダンスの大きいヘッドホンは音が小さいのです。
オーディオインターフェイスのTASCAM US-144MKⅡでは
ヘッドホン出力が18mW+18mW/32Ω負荷となっています。
ウォークマンのSONY NW-S760では
ヘッドホン出力が5mW+5mW/16Ω負荷となっています。
携帯用音楽プレーヤーにインピーダンスの大きなヘッドホンを使用すれば、
付属イヤホンより音量が小さく聞こえます。
最近では外国製のヘッドホンも30~60Ωの製品が多くなりましたが、
高級機種では300Ωクラスのヘッドホンもあります。
ヘッドホンを駆動するアンプがしっかりしていないと本来の音を
聞く事が出来ないばかりか、音が小さくて後悔することになります。
携帯プレイヤーでは16Ω前後、DTMで使用する入門機では
30Ω~50Ω前後、オーディオアンプや専用アンプでは、その
性能に合わせて選択するのが良いと思います。
最後に最大入力ですが、mWで表されています。
これはどの位の電力を受けることができるかを表わしていますが、
通常耳を覆う大きなヘッドホンでも1,000mWもあれば十分だと思います。
大きな音でベースやドラムなどのモニターに使用する場合は、
瞬間的に大きな電力を受けることになるので、1,500mWもあれば
通常のリスニング用途では問題ないと思います。
ヘッドホンはスピーカーと違い、
耳の付近で大きな音を聞くことになります。
長時間大きな音圧にさらされると難聴となりますので、
音量には注意が必要です。
まとめます。
周波数特性は、再生可能な最低周波数と最高周波数であり、
その途中のカーブについては不明で音の良さと関係ない。
出力音圧レベルは全周波数帯域での感度ではなく、
1kHzでの感度であるのでこれも音の良さとは関係ない。
インピーダンスはボイスコイルの抵抗値なので、
小さい程大きな電流を流す事ができる。
しっかりしたボイスコイルでは抵抗値は大きいが
その分、アンプからの出力を上げれば音に力がでる。
これも数値で音の良さは判らない。
さらにまとめ。
全ては指標の一つであって「点」を示しているものである。
よって、「線」を知る為には実際に聞いてみないと解らない。
こんな身も蓋もないまとめとなりました。(^^;
何かの参考までに。