MS処理についてまとめてみます。
DAWでトラックの処理を行う際、その殆どをL/Rで処理していきますが、
MS処理という方法もトラック処理の選択肢としてあります。
・広がりを持たせたい又は狭めたい
・録音したトラックの音場を再構築したい
・ボーカルを前面に出したい又は引っ込めたい
・モノラル再生での互換性を高めたい
・音圧を稼ぎたい
MS処理を行う理由の多くはこんな感じでしょうか。
MS処理については過去にMS処理、Mid/Sideのゲイン、
プラグインについてはMS処理に対応したものとして、
Voxengo フリープラグイン、HOFA PLUGINSで書いています。
そもそもMS処理とは
通常の処理がモノラル又はL/Rで行われるのに対し、
MS処理ではMidとSideの別で処理を行います。
中央(Mid)に定位した音と両端(Side)の音という具合になります。
よって、L/Rの音に対して有効なMS処理です。
※モノトラックの音でもmonoからstereoに処理するエフェクトで
この際にMS処理を行っているプラグインもあるようです。
L/Rの信号をM/Sの信号に変換する際は、
MSエンコーダー/デコーダーを使用すると簡単ですが、
位相を利用して手動でMidとSideに分けることもできます。
Mid=L+R
Side=L-R
これでそれぞれに書き出すと、
MidとSideのファイルが出来ます。
パンを左右に振ってMとSを別々に書き出しましょう。
書き出されたものはモノトラック×2です。
そして再びDAWに読み込んで、
それぞれにエフェクト処理を行います。
(L+R)+(L-R)=2L
(L+R)-(L-R)=2R
これでL/Rに戻ります。
パンをうまく活用して戻しましょう。
ただし、音量が倍になっているので、
電圧比で6dB、電力比で3dB下げておきます。
MS処理のパターン
一般的なDAWでのトラック処理
Aは一般的なDAWでのトラック処理です。
L/RのステレオかモノラルトラックをVSTプラグインで
ダイナミクス系、EQ、空間系、残響系のエフェクターで
処理しているイメージです。
MS処理に対応したプラグインを使った処理
BはMS処理可能なVSTプラグインを使用しているイメージです。
プラグイン内でL/RをMid/Sideにエンコードし、
MidとSideの別でエフェクト処理を行い、
そのプラグイン内でM/SからL/Rにデコードしています。
MS処理に対応したプラグインを用いて、
簡単にMS処理できるパターンです。
L/Rの別で処理できるプラグインをMS処理に活用
CはMSエンコーダー・デコーダーを使ってL/Rの信号をM/Sの信号に変換し、
普段使い慣れているいつものプラグインをMS処理に活用したい場合です。
しかし、この場合、LとRを別に設定できるプラグインでないと、
MとSの別で処理することができません。
処理された信号はMSデコーダーによってL/Rに戻されます。
面倒だけども多くのプラグインを活用できるパターン
Dは面倒ですが手持ちのプラグインエフェクトを
思い切り活用できるパターンです。
L/Rの信号をMSエンコーダーを使って
MidとSideの別でモノラルで書き出します。
このMidとSideのデータを再びDAWで読み込みます。
こうすることでMidとSideのそれぞれに
いつもの使い慣れたコンプレッサー等を使用できます。
マルチバンドコンプを使うもよし、
MidとSideで別のコンプを使用するもよしです。
最後にMSデコーダーを使用し、
LとRの信号に変換して書き出します。
MSエンコーダー・デコーダー
冒頭に書いたMSデータの作り方と戻しかた
エンコード:Mid=L+R、Side=L-R
デコード:(L+R)+(L-R)=2L、(L+R)-(L-R)=2R
最後に電圧比で6dB、電力比で3dB下げる。
これを自動で行っているのがMSエンコーダー・デコーダーです。
無償のプラグインではvoxengo 14 Free VST pluginsにある
Voxengo MSED(Mid-Side Encoder Plugin)があります。
フリープラグインを使ってMS処理を体験してみよう
MS処理するとどんな感じになるのか
フリーのプラグインを使って体験してみましょう。
Blue Cat AudioのBlue Cat’s Freeware Plug-ins Pack IIにある
「Blue Cat’s Gain Suite」
AAX/AU/VST 32bit/64bit等、幅広く対応したプラグインです。
見てのとおり、MidとSideの別で簡単にゲインを調整できます。
ここからはVoxengo Free VST and AU Pluginsです。
「Voxengo Tube Amp」は三極管オーバードライブ。
真空管アンプシミュレータなのにMS処理に対応しています。
FFT Spectrum Analyzer「Voxengo SPAN」
周波数分布を確認する為に使用するいわゆるスペアナです。
Simple Sound Delay「Voxengo Sound Delay」
Mid/Sideでディレイを使うとどうなるのでしょう。
Mastering Graphic Equalizer「Voxengo Marvel GEQ」
MS処理できるイコライザーは多いですね。
Voxengoのフリープラグインをざっと見ただけなので
見落としがあるかもしれません。
いつも何気なく使っているDAW付属のプラグインや
別途購入したサードパーティ製のプラグインを確認してみてください。
もしかしたらMS信号に対応したプラグインがあるかもです。
MS処理を行うと、 やり方によっては簡単に音圧を上げることが可能ですが、 どこか不自然になったり、やりすぎて歪んでしまうことがあります。
音圧を上げるには各トラックやマスタートラックの周波数分布を見ながら
マルチバンドコンプレッサーやEQ、PANで調整するほうが
自然な感じがする気がします。
もちろんMS処理でも自然な音圧アップは可能ですが、
私にはまだまだ慣れが必要で敷居が高いです。
私は広がりを再調整したい時か、
モノラル再生時の互換性を高めたいときに
MS処理を行う時があります。
モノラル再生の互換性というと
今時代に何をと思われるかもしれませんが、
プロの曲をモノラル再生した時はそう違和感がないのですが、
自分が作ったものを聴くと「あれッ!?」と思う時があります。
どんな環境で聴かれるか判らないいじょう、
そして私のような者が作った曲を聴いてみようと
思って下さった方への礼儀として、
モノラルで書き出して変だなと感じた場合は
MS処理を使って補正することがあります。
エラそうに書いてますが、
気を使いだしたのは最近の話であります。(^^;
コメント
おはようございます(^^)
MS処理… 知りませんでした><
また、説明を何度も繰り返し読みましたが、、、どうも入ってきません(^^;
ステレオ(左右)に個々にエフェクトを掛けたりできる、、
と言う事でしょうか…
フリーのBlue Cat’s Gain Suiteをゲットして、試してみたいと思います(^^)
HA-ROOKIE さん、こんばんは。
挿し絵の追加と本文も加筆修正してみました。
どうでしょう、伝わりやすくなったでしょうか。
最近ではMS処理に対応したプラグインも増えており、
意識せず使えるものも多くなりました。
インターフェイスも最近は1万前後の商品もあり、
DTMに関する敷居がどんどん低くなっているようですね。(^^)
昔はハードの音源だけで・・・・。(>_<)