以前にはんだ線という記事を書いたのですが、その続きです。
ギターのメンテナンスやサーキット交換、ケーブルの自作などでハンダ作業をすることがあります。
ギターのサーキットなどへの使用で人気があるのはKester44でしょうか。
ホームセンターでは音響用の半田線も販売されています。
前回の内容のおさらいと補足も兼ねて半田線について書いてみます。
共晶半田と無鉛ハンダ
錫(スズ/Sn)の割合が63%のものを共晶半田といい、錫63%、鉛(Pb)37%の成分となります。
共晶半田の融点は約183℃と低くハンダ付けが容易なのが特徴です。
しかし2006年7月にRoHS指令が始まり、人体に有害な鉛を使用したハンダの電子・電気機器への使用が原則として禁止され、欧州連合内に輸出するパソコン、テレビなどへの使用ができなくなりました。
日本にも2006年7月からRoHS指令に合わせる形でJ-MOSSという特定化学物質の含有状況明示方法が規格化されたものがあります。
そこで登場したのか脚光を浴びたのかは判りませんが鉛フリー半田(無鉛はんだ)が一般的になりました。
社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)では、錫(Sn)96.5%:銀(Ag)3.0%:銅(Cu)0.5% の鉛フリーはんだを推奨しています。
この成分率での融点は約220℃となり、共晶半田(Sn63%:Pb37%)の融点である約183度と比較して約37度高くなります。
確か無鉛ハンダも成分構成によって118度とかありますし、書くのに面倒なので差は約40度ということに。(^^;
この約40度の差がハンダ付け作業を難しくさせるのです。
ギターのサーキット交換でこんな経験は?
こんな経験はありませんか?
ギターのサーキットを交換したのに、ボリューム、トーンにすぐにガリが発生する。
ピックアップセレクターが上手く動作しなくなる。
不良品にでも当たったのかとポットを交換してもまた直ぐにガリが発生する。
これはハンダ作業でパーツに熱を加えすぎていることが原因で発生することがあります。
ギターのサーキット交換などのハンダ付けはサッと済ますことが大切です。
パーツ交換で新しいポットにハンダを付けるのは慣れれば簡単なのですが、問題は線材を交換するときやピックアップの交換作業。
古いハンダを溶かす時や取り除く時にどうしても熱を加える時間が長くなります。
古いポットはそのまま使用するのでここで傷める訳にもいきません。
なぜ Kester44 が人気なのか。
もちろん音質的に認められていることが一番なのかもしれませんが、作業の簡単さもその人気に影響していると思います。
一般的なKester44の成分率は錫60%:鉛40%の共晶半田に近い成分構成で融点は183~190度となっています。
写真のKester44はallparts japanのサイトに錫60%:鉛40%であることの記載がありましたが、同じKester44という製品名でも枝番名で成分構成が錫60%:鉛40%と錫63%:鉛37%のものがあります。
また濡れ特性が良いのも人気に影響しているのでしょう。
「濡れ」を簡単に書くとハンダの広がりが良いか悪いか。
悪ければ玉状に固まり、良ければ低い山で裾野が広い。
良い悪いという表現が合っているかどうかは判りませんが、濡れが良いハンダ線が使用されていれば、ポッド交換時に僅かの時間で熱を加えることができるので古いハンダの除去が簡単です。
逆に玉状になっているとハンダが解けるまで熱を加え続けることになるのでパーツを傷めることにもなりかねません。
ケーブルを作るときも網線にスッと溶けて入っていくので作業が簡単です。
あとはハンダ線がほど良い太さである。
個人的な感想ですがKester44が人気なのは音質の他にこんな理由もあるのかなと思います。
ホームセンターで販売しているハンダ線
これはどちらもホームセンターで購入できるハンダ線です。
まずは低温ハンダと書いてある商品から見てみましょう。
成分構成と含有率の記載はありませんが融解温度が143度と低く最適作業温度は190度前後とあります。
融点が約220度前後の無鉛ハンダでは無いことは判ります。
用途には「IC等低温でハンダ付けしなければ部品の特性が損なわれる場合に使用する」とあります。
音質について拘らなければハンダ作業で失敗の少ないハンダ線かもしれません。
しかし、正直な話、私はコレとKester44の違いが聞き取れませんでした。(ToT)
耳も歳を取りました。笑
音響部品用のハンダ線です。
楽器用でもギター用でもありませんが、音響部品用なら音に変な影響は無いだろうと。
用途には、マイクコネクタの補修、オーディオプラグ、アンテナ用端子、スピーカー等にと記載があります。
成分構成はスズ60%:鉛40%とKester44と同じです。
ヤニの種類は活性化ロジンが使用されていますが、これもKester44と同じです。
融点は183~190度と記載があります。
概ね音響用とか楽器用はスズ60%:鉛40%が多かった。
田舎ですのであまり多くの製品を見る機会が無いこともありますが、音響用とか楽器用で見掛ける商品はスズ60%:鉛40%の製品が多かったです。
勝手に考えるに、2006年7月のRoHS指令が始まる前からギターはあったわけなので、それ以前に使われていた共晶半田に近い配分のスズと鉛が使用されていたのでしょう。
楽器用では60:40が多いことから海外のギターではその構成率のハンダが使用されていたり、国産ギターでは共晶半田(スズ63%:鉛37%)が使われていたりするのでしょうか。
ビンテージギターのリペアではその違いに拘りがあったりとか。
知りませんが。(^^;