パソコンとオーディオインターフェイスを接続するUSBケーブル。
このUSBケーブルで音が変わるのでしょうか。
「デジタル信号だから変わらない。」
「品質によって変わる。」
さて、私の環境ではどうなのでしょうか。
まずその前に。
ギターのノイズ
ギターノイズまとめに書いているようにパソコン周辺はノイズだらけです。
そのため、ノイズ改善方法4で少し書いているのですが、
フェライトコアを使ってコモンモードノイズ、又は、
ノーマルモードノイズの減衰を行う場合があります。
オーディオインターフェイスやマルチエフェクターの
電源やUSBケーブルにフェライトコアが付いていることがあります。
これは信号線を一まとめに包むので
コモンモードノイズの対策を行っています。
そしてUSBというもの。
USB転送1で書いていますが、
オーディオインターフェイスとUSB接続されたパソコン間では
アイソクロナス転送しています。
アイソクロナス転送では伝送中に何らかの影響で
データが欠落または変化してもそのまま受けることになります。
USB転送2で少し書いていますが、
USB1.1では1msを1フレームとして転送しています。
アイソクロナス転送で1フレームにエラーがあったとすれば、
1msなのでプチッとか聞こえるかもしれません。
USB2.0では1フレーム(1ms)が8マイクロフレームで構成されているので、
1マイクロフレームは125マイクロ秒。
1マイクロフレーム(1ms)に1024byteのトランザクションを
3回送ることができるので転送エラーがあったとしても
耳で分かるようなものでは無いでしょう。
ちゃんとしたメーカー製によるUSBケーブルは規格品なので、
不良品でない限り、アイソクロナス転送でも問題はないハズです。
商品になりませんから。(^^)
それなら、まともなUSBケーブルなら音に差がでないか。
しかし、もう一つ考えることがあります。
それはUSBケーブルにはバスパワーに使用する電流が流れているということ。
USBの電流で書いていますが、
USB2.0の規格では 電圧5V、消費電流500mA、消費電力2.5W です。
ここはアナログ的な部分です。
5Vなので例えば2.5V以上を「0」、以下なら「1」といった風に
デジタル化しているのでしょう。
電圧の立ち上がりと下がりで多少なりとも「時間」を要しますが
それはケーブルの話ではなく機器側の役割です。
クロックによるジッターも機器側。
USBプラグを簡単に描くとこんな感じです。
1.V:送り側 4.75~5.25 V/受け側 4.4~5.25V
2.D-
3.D+
4.GND
USBケーブルを変えて音が変わるなら、
USBケーブルでVとGNDにノイズが混入するからなのか。
最初のノイズのキャプチャのところです。
USBケーブルにノイズが混入すれば機器にも影響するので、
ダイナミックレンジやノイズレベルに影響があるのでしょうか。
ノイズの多くは高周波なので、ケーブル被膜や撚線仕様、
ケーブル内部で信号線と電流線がセパレート構造になっている
ケーブルを使用すると、ケーブルでのノイズ混入が減少する分、
高周波ノイズが減ったので「高域がスッキリした」。
または高域への影響から逆に中域が「太く」又「豊か」に聞こえるとか。
音は心理的な影響も大きいので人により印象は様々でしょう。
では、そんなことが起こるのか。
デジタル信号は関係無いとすると電圧/電流に関することか、
ノイズ混入対策の違いしか思いつきません。
バスパワー駆動のオーディオインターフェイスでは
ここにノイズが乗ると影響が大きいのかも知れません。
かなり長い前置きになりましたが
押し入れにあったUSBケーブル。
左から
USBハブに付いていたもの。
エレコム製のUSBケーブル。
NECの業務用機器に付いていたもの。
メーカー忘れたけど昔プリンタ接続に使っていた5mのUSBケーブル。
写真を撮ったあとに分かったのですが、
一番左のUSBハブに付いていたものは相当古いもので
断線か何かしているようで使用できませんでした。(^^;
USBケーブルの違いによるノイズレベルとダイナミックレンジ
RightMark Audio Analyzer 6.4.1を使って計測してみました。
使用したオーディオインターフェイスはスタインバーグ UR28M。
最新のASIOドライバを使用しての計測としています。
メーカー公称値のダイナミックレンジは101dBですが、
マンションという集合住宅であるうえに
あれやこれやの機器と一緒のコンセントを共有しているので
測定結果は大目に見てやってください。
6イン/8アウトに内蔵のDSPエフェクト、バンドル版CUBASEも付いて
市場価格で3万円を切る懐に優しいインターフェイスです。(^^)
ノイズレベル -92.7dB、ダイナミックレンジ 92.7dB。又は測定誤差程度。
上がノイズレベルの測定結果。下がダイナミックレンジの測定結果。
どれも一緒で面白くないので、
5mのUSBケーブルを使用してUR28M本体の設置アースの有無で
ノイズに変化があるか測定してみました。
これもノイズレベル -92.7dB、ダイナミックレンジ 92.8dB。又は測定誤差程度。
上がノイズレベルの測定結果。下がダイナミックレンジの測定結果。
これもどちらも同じようなもので面白くない。(^^;
今度はフェライトコアの有無によってノイズの変化を・・・・。
・・・・測定誤差範囲。(^^;
いや、数値では似たようなものだけど、
周波数で見ると違うのでは・・・・。
そう、ノイズレベル・・・同じなのね。(^^;
じゃあ、いつもの接続で防音室やら足元の機器やらを
パッチベイを介して静電気でも電位差でも静電容量でも
何でも混ざってかかって来いや!
UR28M本体の設置アースの有無で測定。
これまでと大して変わらん・・・・。
Frequency response。
フラットな特性で宜しいこと・・・。
UR28Mと付属USBケーブルとPCだけで測定
スタインバーグ UR28Mのみを付属していたUSBケーブルで
パソコンに接続した状態で計測した結果です。
Frequency response(+0.00, -0.00)はフラット。
Noise level(-92.8dB)も特にクセは見当たらず。
Dynamic range(92.8dB)も集合住宅であることや、
コンセントにウジャウジャ機器がと思えばこんなもの。
THD + Noise(-86.8dB)。
トータルハーモニクスディストーションも1kHzの信号に対して
変な倍音も出ていないので良しでしょう。
サマリを見ると全高調波歪率も 0.0006%と良い感じです。
Intermodulation distortion (IMD + Noise 0.0064% )
相互変調歪みも良い感じ?
Stereo crosstalk の結果。
Crosstalk at 100 Hz -93dB
Crosstalk at 1000 Hz -91dB
Crosstalk at 10000 Hz -89dB
左右のチャンネルが混ざりあうステレオ・クロストーク。
同じような意味でチャネル・セパレーションとも言います。
ノイズレベルが-92.8dBなので特に問題はないでしょう。
それともノイズレベルに変化があればこの値も変わるのでしょうか。
IMD (swept tones)
IMD + Noise at 5000 Hz, 0.0067%
IMD + Noise at 10000 Hz, 0.0067%
IMD + Noise at 15000 Hz, 0.0066%
綺麗な特性で。(^^)
[本日の] 結果
私の環境ではインターフェイス付属のUSBケーブルも
量販店で買ったパソコン用USBケーブルでも、
業務用機器に付属していたUSBケーブルでも、
5mと規格いっぱいの長さの古いUSBケーブルでも、
フェライトコア付けても、設置アースの有無でも、
計測値は大きく変わらなかった。
ついでに音も聞いたけど同じに聞こえる・・・。
ただし、集合住宅という大音量で聞き比べられない環境と、
耳が痛くなるのでヘッドホンでも大音量で聞き比べていません。
結果:私の耳は歳なりに衰えたお財布に優しい耳であった。