第34話 突入の刻

レイモンド隊の動きが止まった。

捕虜の町は直ぐ前だ。

レイモンドがサインを出す。

アレクシスとクレイグの隊の方向に手が動いた。

『行け』

心の中にレイモンドの声が聞こえた。

そして3つの隊はV字型となって、ゆっくりと、そして静かに、

捕虜の町に向けて再び進行を始めた。

風が一瞬強く吹いた。

次の瞬間。

レイモンドの隊は立ち上がり、そして声を上げて・・・。

捕虜の町の正門めがけて突入を開始した。

激しい銃声が鳴り響いているハズだ。

しかし俺の耳には何も聞こえない。

まるでスローモーションを見ている様だった。

町にゆっくりと灯りがつきはじめた。

異変に気付いたのだ。

今頃、中の兵は武器を手にして正門に向かっているのだろう。

正門にまだ敵兵の姿は見えない。

町の見張り棟からヒドラの兵が墜ちて行くのが見えた。

ヒドラの兵が正門に集まり始めた。

俺達は町の外壁の脇に到着した。

もうここからレイモンド隊の姿は見えない。

さよなら、そしてありがとう。レイモンド大佐。

俺は心の中で呟いた。

そんな表情を察してかアベルが話かけてきた。

「トライオード、戦場に感傷は不要だ。」

「死んでいく仲間の為にも前だけを見て進め。」

俺は素直に頷いた。

背後から音だけが聞こえてくる。

銃声。

壁が崩れる音。

物が倒れる音。

雄叫び。

悲鳴。

断末魔。

これが戦場というものなのか。

あまりに惨い、惨すぎる・・・。

俺は耳を塞いだ。

俺達の隊は町の裏に到着した。

アベルが壁の破壊に取りかかった。

案の定ヒドラの兵はいない。

正門に集中しているようだ。

しかし鉄線に阻まれて思うように破壊が進まない。

アベルが隊に声をかける。

「時間が無い!」

「急げ!」

それを聞いた隊に力が入る。

やっとの思いで人が3人ばかり通れる幅の穴が空いた。

そこからクレイグとアベルの隊は町に突入していく。

先程と比べて静かなる突入だ。

声を上げず、身を屈めて、物陰に隠れながら。

クレイグとアベルの隊は町に散っていった。

アレクシスの隊はこの場に残り、出てきた捕虜に道を伝える。

そして出てきたヒドラの兵を撃つ。

アレクシスは目で俺に合図をした。

『行け、トライオード。』

俺はアレクシスに一礼し、そして町に入った。



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