第22話 暗闇の中で

体中の痛みに俺は起こされた。

ここはどこだ?

どうやら盧のようだな。

辺りは暗くて何も見えないがここは俺一人の様だ。

専用盧か。
手厚い『もてなし』だ。

そういえばどうして俺はここに居る?

どうして・・・。

記憶の中ではクレイグが何かを食べている。

そして俺に何か進めているようだ。

クレイグが俺に言っている。

何て言ってる。

味はどうだ?

何のことだ。

いったいこれは何の記憶だ?

・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

思い出してしまった。

俺はロゼッタを。

食べた。

「グハッ、グハッ、グェァ。」

俺は吐き続けた。

ロゼッタを。

胃の中もモノを。

胃液の全てを。

胃そのものさえここに吐きだしてしまいたい。

俺の中に残ったものは・・・・。

俺の中にあるものは・・・・・。

クレイグ!!

貴様への激しい怒りと、憎しみと、恨みと。

体中からフツフツと湧き出る・・・。

抑えようのない激しい殺意だ!

何かの小説で読んだことがある。

愛するものが病で先立ち、
それを悲観した残されし者が愛する者を食した。

それはその生前、残されし者は愛する者を
自らの血と肉として共に生きることを二人で誓っていたからだ。

しかし、現実は違う。

激しい嘔吐と自分への嫌悪感。
彼女のへ罪悪感と冒涜感。

その尊厳さえも汚してしまった罪の意識しか残らない。

俺はもう『人』ではない。

俺は今日限りで医者を辞める。

もっともあの日・・・。

仲間の兵に銃を向け、その命を奪ったときから
俺は既に医者を捨てていたのかもしれない。

俺はただの殺人者だ・・・
それに人としての道も外してしまっている。

コツ、コツ、コツ。

暗闇から足音が聞こえてきた。
それはどうやらこっちに向かっているようだ。

暗闇のなかであいつの姿が浮かび上がる。

それはクレイグだった。

「貴様・・・。」

「気分はどうだね。トライオード君。」

「もうすぐ兵が来る。」
「一緒に私のところへ来たまえ。」

「もっともお前に断る権利はないがな。」

奴は笑いながら帰っていった。

暗闇の中に俺の吐しゃ物と血の臭いだけが残った。

ロゼッタ。

お前は言った。

自分を許せと。

俺には・・・無理だ・・・。

自分を許して生きていくことはできない。



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