このギターの音は膨よかだとか、このピアノは豊かな音がする等と、
その楽器の音について表現されることがあります。
逆に電子楽器だと、機械的な音とか味気ない音などと表現されることがあります。
これはどういうことでしょうか。
実は基音に対して倍音がどの程度発生しているか。
このことが楽器の音の印象につながっている場合があります。
基音のみが発生する音は少ないですが、
周波数特性や音響特性を見るために使用するテストトーンは
倍音の少ない音を発生させています。
テストトーンを聞いた時、その音の印象はどうでしょうか。
つぎに、基音と整数倍音のみの音があります。
電子楽器に多いパターンで、昔は安い電子楽器によくある特性でした。
サンプリングした音が生楽器であるなら、
その楽器の倍音もサンプリングされています。
サンプリング音を鳴らした時に不自然に感じる場合がありますが、
これは倍音に関連することよりも、サンプリング音の再生に関連する
問題であることが多いです。
例えば、C3の音をサンプリングし、このサンプリング音を加工して
C3~G3までの間で再生されていれば、
C3から離れる程その音に違和感を覚えることになります。
音程が区切られている多くの楽器は平均律で調整されていますが、
その楽器から発生する倍音は純正律となります。
C3でサンプリングした音を加工してG3で発音させれば、
実際にG3を鳴らした音の倍音と、C3を加工して再生するG3では、
倍音の周波数に違いがでます。
もっとも第5倍音以内では平均律と純正律の差は小さいですが、
耳が良い人では、音に濁りを感じることもあるのではないでしょうか。
試しにCUBASEなどのDAWで440Hzのテストトーンを発生させ、
ピッチを修正するVSTで-14セント程ズラしてみてください。
これは倍音で無い事と聞き取りやすくするために440Hzでの実験ですが、
倍音でも同じ事が起こっています。
聞こえるか(感じるか)聞こえないか(感じないか)は別として、
第7倍音では約30セント違いますし、第11倍音では約50セント、
第13倍音では約60セントの違いがあります。
1半音は100セントなので、50セントの差はギターでいえば
クォーターチョーキングしている状態ですね。(^^;
サンプリング音源を利用した安い楽器はコストの面から
多くのメモリを搭載せず、1つのサンプリングで複数の音程を
発音させることでコストを圧縮していました。
高価な楽器では、より多くのメモリを搭載して、
サンプリングの使いまわしによる音の変化を軽減していました。
前者と後者では高品位な素材をサンプリングしたという事実以外にも
倍音に関連した聞こえ方の違いもあるということです。
現在では、ソフトウェア音源、ハードウェア音源ともに、
大容量のメモリを搭載(消費)し、昔ほど違和感の無い音になっています。
倍音に話を戻します。(^^;
では、生楽器ではどうでしょう。
電子楽器とは異なり、同じメーカーの同じ機種でも、
厳密に言えば1本1本(1台1台)で音は異なります。
高価な楽器では製品のバラツキが少ないですが、
安価な楽器では弾いて判るくらい音が違っています。
音の好みや楽器の材質(ランク)にもよりますが、
一般的に倍音が多い楽器の方が、音が豊かであったり、
音が膨よかと表現されることが多いようです。
もちろん、倍音の特性にもその印象は左右されます。
基音の1オクターブ上である第2倍音が強い場合と、
基音の1オクターブ上の完全5度である第3倍音が強い場合では
音の印象が異なるのは想像に易いですね。
特に第5倍音までは強く発生している事が多いので、
その倍音特性は音の印象に繋がりやすいと言えますね。
音は好みと感性による印象であるので、
機器(楽器)の設計以外で数値的な判断は意味を成しませんが、
雑学としては面白いと思ったので書いてみました。
何かの参考までに。