今回は、デジタルの音質悪化について。
アナログで音が悪くなる。これは理解しやすい問題ですが、
「デジタルなので音は悪くならない。」
これは迷信です。
では、デジタルで何故音が悪くなるのか。
音を録音する。
すなわち、この音源が自然音、声、楽器等のアナログであった場合、
マイクを通して録音された音はアナログ/デジタルコンバーターを
介してデジタルデータ化されます。標本化と量子化される訳です。
この段階で、このコンバーターの出来によって「音の変化」が
発生します。これを劣化と捉えれば「劣化」です。
録音する音源を風呂桶の水とするなら、デジタル化された音は
洗面器1杯の水なのかも知れません。
このデジタル化されたデータはオーディオインターフェイスの
A/Dコンバータからパソコンに送られる訳ですが、異なる機器間で
時間軸的な同期をとる必要があります。
この同期には精度の高いクロックを生成していますが、
微妙にズレるのです。
ズレる原因は様々です。
クロック信号の立ち上がりや下がりは
限りなく一定であっても完全に一定ではありません。
先日のノイズ改善の記事で書いた極性や電位の乱れにも影響されます。
S/PDIF方式での接続では信号は単方向なため、何らかのエラーがあっても
エラー発生は送信機器側には通知されません。
この様な、時間軸のズレやエラーは自動で補正が掛かるのですが、
この補正はあくまで補正であって、完全な修復を意味するものでは
ありません。
これらによりデジタルでも音は劣化するのです。
音を聞くモニタースピーカー、ヘッドホン。
これらはアナログ機器です。
デジタルデータはこれらから音を出力するために、
デジタル/アナログコンバーターでデジタル信号を
アナログ信号に変換します。この際もD/Aコンバータの質によって
信号は基の形から変化するのです。
また、デジタル信号が行き来しているサウンドカードで測定した際、
デジタル信号出力からデジタル信号入力間も測定しましたが、
基となる信号以外の倍音が生成され、正確には再現されていません。
このように、デジタルであっても音が劣化する要因は様々です。
デジタルデータは劣化しない。これは迷信です。
今度は、デジタルデータが記録されている
媒体という角度から考えてみましょう。
データを保存する媒体として、
ハードディスク、CD-R、SSD等を思い浮かべることができます。
まず、ハードディスク(HDD)ですが、これは磁気による記録方式です。
なので、電圧等による記録品質のムラは存在しますし、経年劣化も
存在します。これらはエラー訂正により補完されます。
次にCD-R、DVD-R等の記録媒体ですが、これらは色素による
記録方式です。レーザーで色素を焼き切って透過させる。
焼き切らないで透過させない。この違いを0と1に置き換えています。
なので、1回焼くと基に戻せないので、1回しか利用できません。
ちなみにRWは焼き切らないで色素の結晶を変化させます。
この結晶の違いによる反射の違いを0と1に置き換えて読み取って
います。なので、何回でも使えます。(限度はありますが。)
この方式でも、読み込みエラーやは再読み込みしますが、
キズや劣化などにより読み込めない場合はエラー訂正による
補完、補正が必要な訳です。
次にSSDなどのメモリ。
フッラッシュメモリを利用するタイプの方式と同一です。
仕組み上、酸化被膜を通る電子により絶縁体は劣化します。
これにより「寿命」が存在します。また、書き込み読み込みが
集中した素子の劣化は進み、エラーを出すようになり、
このエラー発生率が多くなると不良ブロック扱いとなります。
これを回避する為にウェアレベリングという書き込みが一部に
集中せず、全体に行なわれる処理を行い、寿命とエラー発生を
抑えている訳です。
やはりエラーは発生し、エラー訂正は行なわれています。
この様に、音は入力、出力の間にだけ変化する要因があるのではなく、
記録している媒体にも要因は存在します。
この変化は不可逆的ということができるので、
変化を劣化と捉えることも間違いではないと思います。
デジタルの宿命的なノイズで量子化ノイズというものがあります。
アナログの連続的な電圧をデジタルの階段状の値に変換した時、
この2つの間に差がでます。これを量子化ノイズと言います。
無信号の時にサーとかシーとか鳴っているノイズです。
このノイズは低い量子化ビット数ほど発生します。
これを誤魔化すのがディザノイズです。
逆位相のノイズを発生させて目立たなくします。
ざっと思いつくだけで、これくらいでしょうか。
私は何の専門家でもありませんので、間違っていたらすみません。(^^;
耳で聞いて判るか判らないかは別として、
デジタルで音楽といっても音が劣化する要因は
実に多く存在しているというお話でした。
何かの参考までに。