Requiem~a novelette~

第21話 呪いの雄叫び

俺はニクスの村を出て隣村の市場にいた。武装したカロンの軍人が大勢いる。誰も笑っていない。村の市場が通常どおり開催されているところを見ると、この光景は今日だけではなく随分と続いていると考える方が自然だ。大人は馴れた風だが、子供たちの目は覚えて...
Requiem~a novelette~

第20話 それぞれの道

俺はロゼッタと彼女の家にいる。テーブルには温かいたんぽぽのコーヒーが入れてある。「先生・・・。」「もう何も君は考えるな。」「これは俺の問題だ。」「先生だけの問題じゃないわ!」「この村に医者は必要なの!」「それに・・・。」そう言うと彼女は口を...
Requiem~a novelette~

第19話 決意

次の朝、俺は村に立てられた札を見つめている。『ニクスの村の民に告ぐ。明後日までに隣村の市場までトライオード医師を投降させること。明後日以降、彼をかくまった者は銃殺とする。また村が関与している場合はこの村を焼き払う。なお、彼が逃亡した場合、そ...
Requiem~a novelette~

第18話 三文芝居

「先生!あいつらだ!」ドアに向かう俺をロゼッタが行く手を阻んで制止した。彼女の表情はいつになく厳しい。ロゼッタは先客の男に目で合図を送った。それを見た男は俺の所にやってきて、俺の手を掴むと手の平をゆっくりと上下した。どうやら俺に『しゃがめ』...
Requiem~a novelette~

第17話 終りを告げる鐘

あれから1週間が過ぎた。俺達はどこかぎこちない。それはそうだろう。あんなことがあったんだ。昨日と変わらない毎日が始まった。それでも人はこんな生活を幸せと呼ぶのだろう。でも何かが足りない。心の中にポッカリと穴が空いているようだ。下から良い香り...
Requiem~a novelette~

第16話 天使の涙

穏かな日だ。いつもの毎日が始まる。ロゼッタは診察の後片付けをしている。夜間の急患で忙しかったが、充実した毎日を俺は送っている。今日は休診日だ。ロゼッタの家は村から少し外れた所にある。家の横には小川がせせらいでいる。眼を凝らして見ると小さな魚...