・Requiem~a novelette~

第22話 暗闇の中で

2014/11/08

体中の痛みに俺は起こされた。

ここはどこだ?

どうやら盧のようだな。

辺りは暗くて何も見えないがここは俺一人の様だ。

専用盧か。
手厚い『もてなし』だ。

そういえばどうして俺はここに居る?

どうして・・・。

記憶の中ではクレイグが何かを食べている。

そして俺に何か進めているようだ。

クレイグが俺に言っている。

何て言ってる。

味はどうだ?

何のことだ。

いったいこれは何の記憶だ?

・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

思い出してしまった。

俺はロゼッタを。

食べた。

「グハッ、グハッ、グェァ。」

俺は吐き続けた。

ロゼッタを。

胃の中もモノを。

胃液の全てを。

胃そのものさえここに吐きだしてしまいたい。

俺の中に残ったものは・・・・。

俺の中にあるものは・・・・・。

クレイグ!!

貴様への激しい怒りと、憎しみと、恨みと。

体中からフツフツと湧き出る・・・。

抑えようのない激しい殺意だ!

何かの小説で読んだことがある。

愛するものが病で先立ち、
それを悲観した残されし者が愛する者を食した。

それはその生前、残されし者は愛する者を
自らの血と肉として共に生きることを二人で誓っていたからだ。

しかし、現実は違う。

激しい嘔吐と自分への嫌悪感。
彼女のへ罪悪感と冒涜感。

その尊厳さえも汚してしまった罪の意識しか残らない。

俺はもう『人』ではない。

俺は今日限りで医者を辞める。

もっともあの日・・・。

仲間の兵に銃を向け、その命を奪ったときから
俺は既に医者を捨てていたのかもしれない。

俺はただの殺人者だ・・・
それに人としての道も外してしまっている。

コツ、コツ、コツ。

暗闇から足音が聞こえてきた。
それはどうやらこっちに向かっているようだ。

暗闇のなかであいつの姿が浮かび上がる。

それはクレイグだった。

「貴様・・・。」

「気分はどうだね。トライオード君。」

「もうすぐ兵が来る。」
「一緒に私のところへ来たまえ。」

「もっともお前に断る権利はないがな。」

奴は笑いながら帰っていった。

暗闇の中に俺の吐しゃ物と血の臭いだけが残った。

ロゼッタ。

お前は言った。

自分を許せと。

俺には・・・無理だ・・・。

自分を許して生きていくことはできない。

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