第26話 始まりの予感

マドックと話しているとアレクシス大佐と奴が戻ってきた。

奴が口を開いた。

「マドック君とか言ったな。」

「ハイ!大佐!」

マドックは奴に敬礼する。

「君は少し口が過ぎるようだ。」
「アレクシスの側近と聞いて少しは頭の良い奴だと思っていたが・・・。」

「もう少し利口になったらどうだ?」
「そのままではやがてアレクシスにも迷惑が掛かるぞ。」

奴はマドックを睨んでいる。

「ハッ!申し訳ございません!クレイグ大佐!」
「以後、注意致しますので何卒!」

アレクシス大佐が割って入った。

「もう良いではないか、クレイグ大佐。」
「いや、クレイグ。」

「マドックが話さなくてもいつかは彼の耳に入ることだ。」

「こいつも反省しているだろう。」
「なあ、マドック。」

「ハイ!大佐!」
「大佐のお顔に泥を塗るような真似をして申し訳ございませんでした!」
「何なりと処分をお申し付けください!」

「クレイグ、マドックも反省しているようだ。」
「ここは俺の顔に免じてくれ。」

「俺とお前の仲だろう、クレイグ。」

奴は暫く無言だった。

「わかったよ、アレクシス。」
「これは『貸し』だ、覚えとけ。」

「ああ、喜んで借りとくよ。」

「良かったな、マドック。」
「クレイグ大佐は優しいからお前を許したんだ。」

「これからは気を付けろよ。」
「それと、大佐に感謝しろよ。」

「大佐!ありがとうございました!」

マドックは奴に再敬礼した。

アレクシス大佐がとても紳士に見えた。
さすがはカロンの大佐だ。

いや、元カロンの大佐だ。
いまのカロンはカロンとは呼べない。

何で奴はこんな紳士と深い仲なのだろう。

奴という男がますます判らなくなった。

「トライオード。」

奴が俺を呼ぶ。

奴が俺に何かを言おうとした時だった。

「やあ諸君!お出迎え痛みいるよ。」

彼の登場で緊張した空気が一気に和んだ。

彼は誰だ。

軍服こそ来ていないが二人の大佐と親しいようだ。

マドックが敬礼する。

何もしない俺にマドックが肘で合図を送る。

マドックに促されて俺も敬礼した。

「懐かしいな、レイモンド大佐。」

「堅苦しいことを言うな、アレクシス。」

「レイモンドで良いさ。」

「クレイグも一緒か。」

「元気だったか、レイモンド。」

奴が懐かしそうに声を掛ける。

「今日はどうした。」

アレクシス大佐が尋ねた。

「いやね、ここにお前がいるって聞いたんで会いに来てやった。」

「会いたいと頼んだ覚えはないぞ。」

「ははは、そうだな。実は俺が会いたかったんだ。」

「それに、クレイグ。」
「お前の所にも寄る予定だったんだ。」

「俺の所にもか?」

「ああ、お前が悪趣味な宮殿を建てたっていうからさ。」
「一度見てみたいと思ってたんだ。」

「お前こそ悪趣味な奴だ。」

奴はそう言いながら笑っている。

3人の大佐は仲が良いのだろう。
再会を心から喜んでいるように見える。

「ところでレイモンド、お前は暇なのか?」

アレクシス大佐は軍服を着ていないレイモンド大佐に言った。

「ああ、休暇を貰ったんだ。」
「それでお前らに会いに来たという訳だ。」

「本当に懐かしいな。」
「カロンとヒドラが同盟を結んでからは初めてか。」

「そうだ、こんな所で立ち話もなんだ。」
「昔の戦友がわざわざ会いに来てやったんだ。」
「ちゃんともてなしてくれよ。」

「だから来てくれと頼んだ覚えはないって言っているだろう。」

三人は笑っている。

それから俺達は食堂と思われる部屋に通された。

「大佐・・・。」

マドックがアレクシス大佐に小声で聞いた。

「(マドックが俺を見て)俺達がここにいても良いのですか?」

「聞こえているぞ、マドック君。」
「それにそこにいるのは有名なドクター・トライオード君だろ。」

彼は俺を知っているようだ。
怪訝な表情をする俺を見てレイモンド大佐が言った。

「クレイグが言っていたよ。」

「俺の隊には腕の良い医者がいる。」
「俺に何かあっても彼なら助けてくれるだろうと。」

「それと・・・他にも何か言っていたな。」

「ああ、思いだした!」

「トライオード君は相当な変わり者だってね。」

「人を寄せ付けないばかりか、なんでも敵兵まで手当てするとか。」
「医者としては立派だが、軍医としては失格だとも言っていたな。」

「クレイグはお前を心配して戦場から外したんだ。」
「上層部に知られたら即刻死刑だからな。」

「お前の腕が惜しかったんだろうよ。」

奴はそんな事を言っていたのか。

「お前はクレイグに相当好かれているようだな。」

俺は驚いた。

奴の行動は俺の頭で理解することは出来ない。

バンッ!

突然、奴がテーブルを叩いた。
顔つきが険しい。

「悪かったよ、クレイグ。」
「お喋りが過ぎたようだな。」

「おい!聞こえているか!」

レイモンド大佐が急に声を張り上げた。

「そろそろ飯の時間だ、俺は腹ペコだ!宜しく頼む!」

外で待機しているアレクシス大佐の側近に叫んだのだろう。

「おいおい、俺の部下を勝手に使うなよ。」
「変わっていないなお前は。」

レイモンド大佐の顔が急に険しくなった。

「ああ、変わっていないさ。ここに居る誰もがな。」

どういう意味だ・・・。



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