・Requiem~a novelette~

第40話 鎮魂歌

2014/11/08

「・・・。」

「・・・・・。」

誰か僕を呼んでいる。

「コラ!キミ!」

「いい加減起きなさい!」

「そんなに私の講義が退屈なの!」

誰かが僕のことを怒っている。

眠い。

寝過ぎて頭がボ~っとする。

そんな時、チャイムが鳴り響いた。

「終わった!終わった~!」

「さあ、飯でも食いにいこうぜ!」

みんなが部屋を飛び出して行った。

あぁ、昼飯の時間か。

僕は眠い目をこすりながら弁当を持って建物から出ていった。

「今日は良い天気だ。」

「風も気持ち良い~。」

僕は独り言を呟きながら大きく背伸びをした。

そして一人でパクパクと弁当を食べ始めた。

「外で食べる弁当は美味いな。」

そんな事を言いながら食事をしていると、誰かが僕の所にやってきた。

「君、ここ良いかな。」

凄く綺麗な人・・・・。

青い空に彼女の白衣がとても眩しい。

それはさっき僕を怒ってた人だった。

「どうぞ。」

僕はバツが悪そうに席を開けた。

「今日はとても良いお天気ね・・・・。」

「・・・ところで君、名前なんだったっけ?」

僕の名前・・・えっと・・

「トライオードです!」

口からとっさに出た。

彼女は笑っている。

「まだ寝ぼけているの?」

「トライオードは君が就職するこの会社でしょ。」

「あなたまだ学生のインターシップなのにもう会社の看板になっているの?」

「気がはやい学生さんね。」

彼女はケラケラと笑っている。

「ちょっと待っててね!」

そう言って白衣の彼女は走っていった。

「なんで僕、自分の名前を間違ったのかな?」

直ぐに彼女が帰って来た。

手に何か持っているようだ。

「ハイ、これ!」

彼女は僕にカップを差し出した。

「トライオード社は薬の研究をしている会社なのは知っているでしょう?」

「そこでね、私は新入社員の研修をしながら薬草の研究をしているの。」

「薬草の?」

「君!いま時代遅れと思ったでしょう!」

「まあ良いわ。」

「それ飲んでみてよ。」

僕はそう促されてそれを飲んでみた。

何か懐かしいような味がする。

「どう?美味しいでしょ。」

「ええ。」

「私が作った特製のたんぽぽコーヒーよ。」

「カフェインもないから誰でも安心して飲めるわ。」

「すごく昔から飲まれていてね。」

「好きなの私、この味と香りが。」

「君も何か感じなかった? 懐かしい感じがするでしょ。」

建物の方角からチャイムが聞こえてくる。

「さて、お昼からは研究室に戻らなくっちゃ。」

「君の参加する研修は今日はもう終りね。」

「じゃあ、また明日。」

「今度は退屈だからって寝ないでよ!」

そう言うと彼女は走り去った。

「あの!これ!ありがとうございます!」

「名前は!」

「ロゼッタよ!宜しく!学生さん!」

彼女は元気に走っていった。

僕はデジャブのような感覚を覚えた。

「まあ。いいか。」

「午後から暇だし、図書館でも行って涼むとするか!」

そう言って僕は街の図書館に足を向けた。。

「あぁ涼しい~。」

柔なかな日のあたる窓辺のテーブルに着くと、
誰かが読みかけた本がそのまま置いてあった。

「誰だい。ちゃんと片付けなきゃ。」

開いてあったページに目をやった。

歴史の本だ。

「全く難しい本を呼んでいる奴がいたもんだ。」

僕は自然と本の文字を読んでいた。

今から数百年前。

この国は3つの国に分かれていた。

カロン、ニクス、そしてヒドラ。

ヒドラがニクスを侵略し、カロンも戦争に巻き込まれた。

ヒドラの力は大きく、カロンを吸収して軍事大国になった。

そんな時、旧カロンの兵士たちがニクスの民を救う解放軍を組織した。

解放軍は小さな組織だった。

解放軍は小さな捕虜収容所を解放しただけで歴史からその姿を消した。

しかし、この行動は元カロン国の民と近隣諸国に
大きな波紋を起こす小さなきっかけとなった。

残された旧カロン軍の兵士と近隣諸国が団結しヒドラを討った。

この戦いでヒドラの国王が亡くなり、新しい国が誕生した。

これに合わせて国王のいなかったカロンも新しい国名となった。

ニクスも悲しみの戦いを後の世に伝えるために名を改めた。

カロンはレイモンド王国に。

ヒドラはアレクシス王国に。

ニクスはクレイグ王国に。

新しい王も誕生した。

レイモンドの王はその名のとおりレイモンド国王。

アレクシス王国はマドック国王が。

クレイグ王国にはマット国王が。

新しい国で新しい国王がそれぞれの国を統治した。

そして時は流れ、レイモンド王の死去に併せて

マドック国王とマット国王の提案によって、

3つの国は一つの大国となった。

そして大国の中央、

解放軍が解放した捕虜の収容所があった場所に、

戦士達の魂を鎮める詩が刻まれた石碑が建てられた。

過去の惨事を繰り返さない為にと新王が建立したのだ。

そこには石碑を守るように三体の像も立てられた。

解放軍の指揮官達の像である。

その名をレイモンド、アレクシス、クレイグという。

この鎮魂歌と三体の像が建てられた公園は、
我が国の愛と平和の象徴として多くの人々に愛されている。

この公園の住所は・・・・・。

「あれ、この図書館の少し先の場所だ。」

青年は図書館の窓からその場所を探した。

「あった!」

そこにはビルのように大きな記念碑と

それを守るように三体の巨大な像が建てられていた。

記念碑にはこの戦いで亡くなった戦士達の名も刻まれている。

そこに一般人であったロゼッタと軍医トライオードの名前が
寄り添うように並んで記されてることをこの青年は知らない。

―終話―


最後までありがとうございました。

MOMODON

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