・Requiem~a novelette~

第19話 決意

2014/11/08

次の朝、俺は村に立てられた札を見つめている。

『ニクスの村の民に告ぐ。
明後日までに隣村の市場まで
トライオード医師を投降させること。

明後日以降、彼をかくまった者は銃殺とする。

また村が関与している場合はこの村を焼き払う。

なお、彼が逃亡した場合、
その情報を提供する者の家族には金一封を授け、
その者はカロン国の上官としての一生を約束する。

良識あるニクスの民の英断を我々は期待する。

以上

カロン進軍本部 大佐

クレイグ・オースチン』

ロゼッタがやってきた。

「先生・・これって・・・。」

「ああ。」

幸せな日々に終りが訪れた。

「この村の人たちに迷惑は掛けられない。」

「俺は行くよ。」

「待って、先生。」
「村の人たちの意見も聞いてみましょうよ。」

そう言って彼女は俺の腕を村の方向に引っ張った。

村の人たちが集まっている。

昨日の男もいる。

「みんな先生には世話になったろう。」

「どうなんだ?」

俺達が到着したとき、既に話は始まっていた。

「それじゃ、ニクスの民は恩知らずってことだぞ。」
「お前らの誇りはどこへ行った!」

それでだけ話の筋は読めた。

「殺されたらどうすんだ!」
「村が無くなったらどうすんだ!」

「それは・・・。」

男が言葉に詰まる。

「もういい。」

「先生!」

村の人々が声を揃えた。
だが、誰も俺の目を見ようとはしない。

それが普通だ。
悪く思ってなんかいない。

「先生も看板見たのか?」

「ああ。」

「それで先生はどうすんだい?」

少し間を置いて俺は答えた。

「投降する。」

「先生はそれで良いのかい?」

「ああ。」

「俺のせいで皆に迷惑は掛けられない。」

それにロゼッタ、君を失いたくはない。

彼女は俺と違う。

彼女はまだ若い。

これからいくらでも幸せな人生が待っているだろう。

おれは十分幸せな生活を味わった。

彼女のお陰だ。

これ以上彼女と村の人たちを巻き込めない。

「村のみんなは何も心配することはない。」
「明後日までに俺は投降する。」

「お前さんがいなくなったらこの村の医者はどうすんだい!」

年老いた老婆が堪りかねて口を開いた。

「婆さん、大丈夫だ。」
「俺が十分ロゼッタを鍛えておいた。」
「安心しな。」

老婆は静かに泣いていた。

「ありがとう。村のみんな。」
「これでさよならだ。」

そう言うと俺はロゼッタと彼女の家に向かった。

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